L3BTビームダイナミクス検討会のお知らせ
L3BTはリニアックから3 GeVリングへ入射するビームの最終的なパラメータを決める重要なビーム輸送系であり、3GeVリングの性能や入射チューニング等は、L3BTの性能に大きく依存すると思います。今回、L3BTについて、基本的な観点からのビームダイナミクスの検討を行う事になり、下記の検討会を行いますので、関係する皆さま、興味をお持ちの皆さまの御参加をお願い致します。
L3BTビームダイナミクス検討会
日時 2002年4月4日(木)
10時より
場所 KEK 加速器 準備室サロン
議題
1.L3BTデザインについて 10分 長谷川、松岡
2.L3BTデザインの諸問題 30分 加藤
3.その他
当日、他にまとまったお話を希望される方は、事前に加藤までお知らせ下さいますよう、お願い致します。
2002.4.2 リニアック全体設計 加藤隆夫
L3BTダイナミクス検討会議事録
平成14年4月4日(木)KEK 加速器準備室サロンにて 10時ー12時
出席者:加藤、佐藤(康)、高山、山本(風)、林崎、上野、下崎、木代、町田、高崎、入江、三浦、池上
書記:池上
1.L3BTデザインの現状(長谷川)
別資料あり' L3BTの検討(11)', JAERI-PAL資料 PA 02-044
アーク部中央でlongitudinal collimationを行っている。
アークで入り口でベータ関数を小さくするようラティスの変更を検討した。
longitudinal collimationの効率低下。
木代:必要な軌道制御の精度は?
佐藤(康):アーク中央でベータ関数を絞りすぎているため、エラーに敏感になってはいないか?
佐藤(康)、木代:軌道、Qのエラーに対するsensitivityを考慮に入れて評価する必要がある。
Qを調整して、アークをアクロマティックにした。
transverse collimationを行っているセクションでは、phase advanceを45度にとっている。
佐藤(康):depressed phase advanceを45度にあわせるのではなく、ハロー粒子のphase advanceを45度にあわせるべきではないか。空間電荷を入れたシミュレーションが必要。
山本(風):山本(風)のコリメーションのシミュレーションではSTRUCTというコードを使っており、空間電荷は入っていない。
リング入り口で、アルファ、ベータ、エータ、エータの微分すべての条件を満たす解はない。
上野:リングの要求はゼロカレントで評価されているが、問題はないのか?
町田:入射過程でダイナミックに入射に要求するベータを変えることは考えていない。オペレーションポイントの選び方によるベータの違いのほうが、空間電荷より影響が大きい。
佐藤(康):エータが少しぐらい残っていてもいいかもしれない。リングは入射ビームのベータ関数に敏感ではないのでは?ダンプしやすいベータ関数を選ぶべきかもしれない。いずれにしてもリングのほうの検討がまだ進んでいない。
PARMILAによるシミュレーションの結果を紹介。
縦方向のフェイズスペース上での傾きは現在のデバンチャーの配置では改善できない。粒子数は1万。
高山:粒子数を増やすよりも、99.9%〜100%までの平均を取ったほうがよい。
長谷川:99%エミッタンスの計算については松岡さんに依頼した。
木代:現在のデバンチャーの配置を決めるcriterionは?
長谷川:1番目(アーク直前)については、ある程度のドリフト長がとれ、かつ非線形性がきかないところとしてきめた。2番目(アーク直後)はできるだけ下流がよいが、コリメータセクションがあるため下流にもっていけない。
佐藤(康):デバンチ後、バンチ長が長くなると、ビームパイプの影響を受けるのではないか?バンチ長とビームパイプ径の比は?
林崎:エネルギー補正用空洞はどのように考えているのか。
長谷川:未検討。スペースをあけてあるが、L3BTのデザインを犠牲にはしていない。
加藤:どの程度のスピードのものを考えているのか。メインのライナックで補正できるのでは?エネルギー変動がランダムであれば補正できないし、規則性があれば、リニアック本体で補正できる。
2.新しいL3BTについての提案(加藤)
旧設計:昨年4月くらいのバージョンのL3BTを比較のため使用した。
最近のデザインと大きな差はない。
今回の検討結果の主要な部分は、最近書いたコードを使って行った。コードは現在も改良中であり、叉リングデザインの経験がないので、思い違いとか結果におかしなところがあれば、指摘してほしい。
旧設計では、ベータ関数のモジュレーション、水平、鉛直の差が大きすぎる。
運動量のずれた粒子をクリアカットするために必要なエータ関数の解析的な評価、縦のコリメーションのシミュレーションから、0.1%でコリメーションすることはできない(コアまで切ってしまう)。
一方、ACS出口で3MeV程度エネルギーがずれた粒子が存在しても、デバンチャーの効果によって、0.1%の範囲内に収めることができる。
高山:リングの入射については時間軸方向に分布がのびていても問題はない。
木代:エラーを入れてACS出口でどの程度運動量が広がる可能性があるのか?
加藤:ここに示したACS出力は電場のエラーを2倍にし、且つ、ビームのACSへの入射位相を5度ずらして、大きな縦エミッタンスを得ている。
新設計:longitudinal collimationなしのデザインを提案
ベータ関数を小さく保つ。
ベンドごとにアクロマティックにする。
電流変化に対して一定であるエッジの影響をなくすためセクターマグネットにしたい。
新設計ではカレントによるベータ関数の変化が小さい。
アーク部のシミュレーション結果を紹介。
旧設計では2.67倍のエミッタンス増大がある。
高山:従来のシミュレーションに比べてエミッタンス増大が大きい。dispersionが消えていないことの影響か。
木代:longitudinal collimatorを入れる余地を保険として残しておく必要はないか。
高山:カレントによってQの強さを調節するのは難しくないのではないか。
上野:チョッパーの過渡状態のバンチがとおったほうがよいのでは?
木代:モニターの立場からすると、ビームの広がり具合を見るのは難しい。
佐藤(康):新設計では、収束がつよくなっている分、空間電荷に強くなっている。
高山:longitudinal collimatorが必要かどうか早く判断する必要がある。
木代:リニアックビームの運動量広がりが大きいときに、3 GeVをプロテクトするなんらかの保険が必要ではないか。
加藤:現状のlongitudinal collimatorでは有効でない。
上野:コアまでカットするのは放射線上不可能。
高山:重心の変動はアークより上流で対処するという方針だと理解してよいか。
加藤:rfの変動によるものとすれば、高周波のパルスごとの安定性は、1度1%よりは良いものが必要であると高周波グループに要請しており、了解済みと思う。従って、リニアック全体のチューニングとデバンチャーで対処できると考える。
佐藤(康):PSのリニアックの運動量広がりは計算とあうか。
加藤:タンクの電場の傾きが影響している。フィットすればあう。
佐藤(康):PSではエネルギーがとんでもなくずれている粒子が通ってきているということはないか。
入江:S/N以下で見えていない。
上野:早急に建屋に影響がないか検討する必要がある。
加藤:本デザインをもとに、リング入口までのデザインを長谷川さん松岡さん等にお願いする。私も参加する。
そのデザインが出来た時点で、次の検討会を行いたい。