SNS チョッパーレポートについて
○ 2007年5月17日配信:ICANS SNS レポートより
Initial challenges and reactions
- SCL cavity characterization, changing performance levels
vRing Injection area optics
- Poor chopper performance
このようにSNSのチョッパーは、自らの発表において、poorという形容詞が付けられてしまった。悪いパフォーマンスが、三項目紹介されている。
上図の解説文の意訳:
- チョッパーのプロテクション回路が、立ち上がりと立ち下がり時間を遅くしている。これが、部分的にキックされるビームの量を増やしている。
- チョッパーセンターへのビームの入射がひどいので、(リングへの)ビーム入射毎に不規則に位置が変わる。
- これら両者の影響により、実質的なリニアックビームサイズが増大して、(リングの)ビームオプティクス測定が難しい。
コメント:
- 上図のプロファイルに関して、これはhorizontal或はverticalの両方向であろうか、あるいは、片方向であろうか。片方向だけであるとすれば、チョッパーの非対称性が効いている可能性が指摘できる。SNSのDC traveling型チョッパーの電極の長さは、当初設計では50cmだったが、その後35cmに変更された。J-PARCチョッパーは高周波型であり、その電極長さは、わずかに2.9cmX2に過ぎない。長い電極の場合、中心軌道を保持するようなビーム入射は難しかろうと推定される。
- ところでチョッパーは、ノーマルなビーム部分に対しては横へ振る電圧がゼロのはずである。わずかに、立ち上がりと立ち下がりの量的には微小な部分が横電圧の影響を受け、後続の加速器に悪い影響を与えると考えるのが普通である。従って、本図のように、ビーム全体が2倍に広がるというような大きな影響は、本来のノーマルな運転が行われていれば、考えられない事である。
- パルス磁場であれば、残留磁場効果が想像される。直流のパルス電場では、そのような何らかの効果はあるのだろうか(大電流の影響がありそうだが、作り方によるか?)。J-PARCチョッパーは、高周波なので、そうした類いの問題は、基本的に存在しない。
- 当初設計は、電極長さ50cmで電圧が900Vであった。変更後は、35cmで2.35KVである。当初の設計者は、DCチョッパーの機械としての問題点がどこにあるかが、よくわかっていたに違いない。ところが、最新デザインでは2.35KVになり、電源の難しさが増大してしまった。
- J-PARC高周波チョッパー電源は、NECの放送用固体増幅器を改良した製品である。第一に、放送用なので、信頼性が高い。第二に、ユニットアンプの出力は、たかだか1kWにすぎない。複数台のユニットアンプ出力を、マイクロ波受動回路を使って合成して、最終の高出力を得ている。従って、出力電力を増やしても、電源の高圧部分にはなんら影響はない。受動回路の部品の耐電圧特性には相当の余裕がある。高周波チョッパーを選択した一つの理由が、電源の高い安定性であった。第二の理由は、チョッパー空洞のQ値による決まる時定数と、チョップビームの立ち上がりと立ち下がり時間は、基本的には(高周波チョッパーで扱う電力程度であれば)無関係に出来得る事が判明したからである。
○ 2007年度のチョッパー関連の課題は次の如く記されている。
- Chopper Mitigation Efforts
- Upgraded MEBT structure (summer 07)
- Enhance LEBT chopper circuitry (summer-fall 07)
- Upgraded LEBT structure (summer ミ fall 07)
- Magnetic LEBT (1-2 years)
○ 2004年のリニアック国際会議には、チョッパーの性能の一つの目安である立ち上がり時間と立ち下がり時間の測定結果が報告されていた。
○ SNSのこれまでのレポートに見られるチョッパーの記事
- The
initial requirements [2] called for a 50-cm long MEBT
chopper with the rise and fall time below 2.5 ns to avoid
partially-chopped bunches.
- Later beam dynamics simulations have shown that partially
chopped bunches would not lead to extra beam loss
in the linac or the ring transfer line. In the most recent
MEBT design the chopper length was reduced to 35 cm,
while the inter-plate gap was increased from 15 to 18 mm.
- A shorter chopper improves the MEBT beam dynamics.
To provide the designed beam deflection of 18 mrad, the
requirement for the pulser voltage was changed from 1.5
to 2.35 kV with a slower rise and fall time, below 10 ns.
- The chopper pulser has now the peak voltage 2.35 kV,
higher by factor 2.6 compared to its original specification
of 900 V [2], so that the peak current through the meander
line is about 47 A. As a result, the power dissipation in the
chopper structures requires an extra attention.
- 1/25/2005 : One of the high voltage supplies in the MEBT Choppers shut off for no apparent reason approximately every 10 minutes.
- 060929: MEBT chopper structure conditioned to full voltage (DC and pulsed) and installed in beam line.
- 061110: Repair of Positive and Negative MEBT Pulser
- 070302: A study on the increase in effective beam size due to degraded chopper performance indicates up to 100% increase in the beam size in the HEBT.