SDTL空洞への給電法について


○ 1996年にJ-PARCリニアックに採用したSDTLの基本デザインが公表されている(T. Kato, "Design of the JHP 200-MeV Proton Linear Accelerator," KEK Report 96-17)。そこでは、SDTL空洞への給電法についての若干の考察がなされているので、紹介する

このような事が背景にあって、SDTLの給電方式デザインが決められたのであるが、当時の計算結果を次に紹介する。(以下の図は最終デザインを決める前段階を基礎にしているので、特に低エネルギー部分のデザイン値は、最終デザインとは異なる。従って、製作された最終デザインのSDTLと比較する場合には注意が必要である)

    

SDTL空洞に必要な電力を示す(励振電力、30 mAビーム電力、全電力(30mA, 60mA)。

ここでは次の電力分割システムを考える。
  4分割出力クライストロン 1台
  3分割出力クライストロン 3台
  2分割出力クライストロン 9台

加速ビーム電流が 0 mAと 60 mAの場合について、必要となる全電力(励振電力+ビーム電力)の比を図示する。各クライストロンに属する低エネルギー側タンクの必要励振電力を1としている。

上図の最左部の4分割システム(タンク番号1〜4)では、励振電力は空洞により最大14%程の違いがあり、ビーム電力を寄与すれば、必要電力比が空洞毎に変化する。ビーム電力による変化は1%以上あるので、全ての加速ビーム電流強さの範囲にわたり、適正な加速電場を保つ事は難しくなる(電力分割比を固定する場合)。

このようにビーム電流により最適な電力分割比が変化する場合には、 など考慮して、影響を小さくする事が考えられる。

リニアックの後続に2種類のリングがある場合、それぞれのリングへ供給するピーク電流値として、異なる値が要求される場合が予想される。
高周波的に3分割は適当ではないので、最終デザインにおいては、2台のSDTL空洞を1台のクライストロンによって励振するシステムを全系に採用した。この場合の最終デザインは、クライストロンの電力を二等分すれば、SDTL空洞の加速電場強度は加速電流値にかかわらず要求仕様をほぼ満たす。