DTL-3空洞内のビームロスについて 2008年10月
○ 2008年9月のビーム運転後に、リニアックのDTL空洞-3の出口付近において、かなり強い放射化箇所が見つかった。将来のデューティが増えるビーム運転においては、大きな障害となる可能性があるので、イオン源からSDTLの途中くらいまでのチューニングの改善が必要だろう。
配信されたメールを紹介する。
- Subject: D3の残留放射線
D3の最下流部に今回も残留放射線レベルの高い部分があったようです。作業には注意して下さい。
さて本日、その分布を自分で測定してみました。結果は最後から2つ目のギャップのみで、かつ水平方向で放射線レベルの高いことがわかりました。この加速ギャップ直前の2〜3つのDTQ(設定電流が「0」のQがあったかも?)の収束力不足かもしれません。
タンク外部でかつ試験終了1週間後でも2マイクロシーベルト/hですので、内部はかなり高かったはず。
今のままでは更に放射化が進みます。
Q設定の再検討が必要ではないでしょうか?
添付レポート中の測定結果図を以下に引用する。
配信レポートは以下に。
DTL最下流部の残留放射線に関する追加測定結果
今後必要なチューニング
DTL-3空洞の放射化部分の近くでビームの広がりが大きくなるか、あるいはビーム軌道全体が偏って、ドリフトチューブにビームが衝突している事は確かである。空洞内ビームロスは、空洞ダウンの呼び水となり、DTL表面を痛め、放射化を招くので、避けねばならない。
- DTL からSDTLへのビームの接続は、J-PARCリニアックの中でも最も注意深いチューニングが必要な箇所である。その理由は、この部分の基本の構成要素が横方向のマッチングを達成する目的用ではないからである。
- 従って、この部分のマッチングは相当数の四極磁石を動員して行う必要がある。
- ビーム中心軌道とビームの広がりを分けて考える必要がある。
- 現在のRFQ出力ビーム中心は、時間的にふらつくようである。まずは、原因を明らかにして、この現象が起きないか、ふらつきを小さくする必要がある。あるいは、MEBTでFBをかけて修正する方法も検討の余地はある。
- DTLの中のビーム中心の蛇行が小さくなるように、全体としてチューニングする必要がある。これには、空洞の整列、運転時の動的な問題、DTLへのビーム入射のチューニングが問題となろう。
- ビームの広がりを押さえるには、第一にDTL入射時の横マッチングに注意する。
- 想定している運転条件では、収束力が弱いとビームサイズは広がるので、全体的に十分な収束力を与えてビームサイズを押さえる必要があるだろう。エミッタンス増加の点からも、現状の収束スキームは最適ではない。
- 可能性としては、DTL-3タンクのドリフトチューブの整列が大きく乱れていれば、ビーム損失につながる。四極電磁石の励磁を変化させれば、その程度は判断できる可能性がある。
以上書き連ねた事は、リニアックの横方向チューニング、あるいは運転の基本である。基本的問題であるから、担当者には力量を十分発揮する余地があると思われる。