ドリフトチューブに組み込む収束用四極磁石は、DTLの運転周波数が高い場合には、その製作法が難しくなります。
まず、ドリフトチューブの大きさは、運転周波数(ここでは 324 MHz)に反比例して小さくなります。ところが、収束に必要な
磁場勾配は周波数に比例して(ある一定の条件のもとで)大きくなります。周波数が高い場合には、永久磁石を使って製作する事が
試みられ、KEKにても成功しています。しかしながら、収束条件を大幅に変化させる場合には、永久磁石による製作は不向きといわざるをえません。
そこで、電磁石でつくる事になります。この場合には、磁石材料の飽和の問題等があり、ドリフトチューブの中という限られた空間の中で、
適切な磁石をつくるという機械工学的に難しい問題を解決しなければなりません。
今回、初めて開発した電鋳コイルは、KEK の20-MeV陽子リニアックに使われていた四極電磁石製作法の長所を活用しながら、
磁石発熱の冷却の問題等を大幅に改善した製作法となっています。この方法は、当研究所の高崎教授の基本的なアイデアに、
三菱重工業の新しい工夫を加え、さらに、製作に当たっては、性質の良い電鋳法を使っています。
ドリフトチューブの中へ組み込む前の四極収束磁石。薄赤色のリングは、焼きばめ法を使って、
磁石のコアの周りに取り付けた冷却水ジャケット。斜め上方に延びている2本の銅管
(ホロコンダクター、途中は絶縁被服で蔽われている)は、電磁石への通電と冷却を兼ねている。
この部分は将来、ドリフトチューブステムの中へ入る。
冷却水ジャケットは四分割されている磁石コアを固める役目も持つ。
参考文献 324 MHz - DTL 四極電磁石用電鋳コイルの開発