モニターとチューニングについて 981010 T. Kato
1 チューニングの目標 リニアックのチューニングは次の三点の実現を目指す。
1)縦と横のマッチングを調整してビームを入射する事(MEBT tuning)。
2)横の収束力(横方向の運動)を調整する事(Q-mag tuning)。
3)縦のエネルギーゲインと収束力(縦方向の運動)を調整する事(加速電場tuning)。 入射器としてのリニアックチューニングは次を目標とする。
4)リング入射後のビーム強度が高い事。
*これらのチューニング後の状態が安定に継続出来る事が必要となる。
*ビーム電流の増減に対応して原理的にはチューニングを変えるべきであるが、現実的にど の程度必要かはビームスタディの結果から判断する。 以上の達成の為に、適当なモニターを配置し、加速パラメータとビームパラメータを測定し て、望ましい加速パラメータを決定する。
補足:
1)リニアック出力ビームの電流、エネルギー、運動量幅(エネルギー幅)、横方向エミッ タンスが、リング入射の重要なパラメータとなるので、リング側からの要請に答える事がリ ニアックの目標となる。。その他にビームハローが生ずれば、その量も(ビーム損失と直結 すれば)重要な指針となるが、将来の事と予測する。縦方向に関して、ビームの平均的なエ ネルギー幅だけが、リング入射チューニングにとって重要なパラメータとなる場合には、リ ニアック出口に設置するデバンチャーを、ビームエネルギー幅が常に一定となるように運転 すれば、縦方向のリニアックチューニングは簡単になる可能性もある。それはリングからの 要請エネルギー幅の仕様にも依存する。ビームの裾の広がり方とか縦エミッタンスの形等が リング入射にとって重要(ビーム損失の観点から)となる場合には、デバンチャーの機能では補正しきれない場合もあると予測する。数字で表したビームの諸量は、ビームのある一面 しか表していないという点に注意して、更にどこまで詳しい情報が必要なのかを検討する必 要がある。
2)「調整する」という曖昧な言葉を使った理由は、唯一の最良のチューニングパラメータ セットを決めにくい(決められない)という予想の為である。DTLだけの加速では、少しば かりのミスマッチがあっても、測定にかかるビームの性質はそれほど変らない(KEK Report 97-16)。横のチューニングが縦のビームパラメータにも影響を与える可能性もあるので、縦 と横の収束力の組のどれが最適かはリニアックだけのチューニングではおそらく決まらな い。そこで、リニアックのビームスタディを通じて、加速パラメータと加速ビームの性質の 関係に関する知識を蓄積する事が重要な作業となる。その場合に、記述するパラメータの種 類、量、質が必要で且つ十分であるかを常に検討する事が求められる。以上は、リニアックビームにどこまでの性能を求めるかにも依存する。
3)定常運転の時に、常時モニターする最低限のパラメータと、チューニングを行う時に必 要なパラメータとを区別する必要がある。更にチューニング、スタディ及び運転の程度 (grade)により、必要なモニター、測定項目及び精度が違ってくる。
2 モニターの種類、略号、機能
CT: current transformer、ピーク電流測定、ピークとはビーム幅500マイクロ秒の時間内の平 均を意味する。
FCT: fast current transformer、バンチ(位相、形)を見る。バンチの縦方向位相情報。
WS: wire scanner、ビームの横方向プロファイル。ビームの位置及び幅情報。
BPM: beam position monitor、バンチを見る。ビームの縦方向位相情報。 ビーム横方向平均位置。
EM: emittance monitor、ビームの横方向エミッタンス。
FC: Faraday cup、ビーム平均電流、又はバンチ観測。ビームダンプに使用。
SL: strip line、バンチを見る。バンチの縦方向位相情報。、ビームの縦方向位相情報。
EANL: momentum analyzer、ビームの運動量(エネルギー)幅。
BLM: beam loss monitor、加速途中のビーム損失検出。
BSM: bunch shape monitor、バンチ波形。
BLVD: bunch length and velocity detector、バンチ波形、バンチ速度(エネルギー)。
注)モニターがdestructiveであるかnon-destructiveであるかは重要な選択項目となる。ほぼ 同じ機能を有する複数のモニターがあるので、どれを選択すべきかは今後検討する。
3 設定パラメータの種類
3.1 RFQビームパラメータ
ビーム電流: Ib
エネルギー: Wrfq
エネルギー幅: DWrfq
位相幅(バンチ幅): Dfrfq
横エミッタンス: ex,ey,
twiss parameter (ax,bx)(ay,by)
ビーム横方向位置:Dx, Dy
注)これらの値は、パルス内(500マイクロ秒)で恐らく変化するので、一般的に言えば、そ の変化量を最小にするというチューニングが必要である。DTL入射ビームは、パルス内の性 質の変化が無いようにチューニングしたい。加速のそれぞれの段階においてこの事は必要と なる。
注)縦エミッタンス( ez=DWrfw x Dfrfq)でも良いが、別々に考えたほうが、実際的。
3.2 MEBTの縦方向の加速パラメータ
バンチャー1加速電場: Eb1
バンチャー1加速位相: fb1
バンチャー2加速電場: Eb2
バンチャー2加速位相: fb2
3.3 MEBTの横方向のチューニングパラメータ
四極磁石電流: Qb1, Qb2,Qb3,Qb4,Qb5, Qb6,Qb7,Qb8
Q1-Q4は主として、RFQビームのMEBTへの入射調整とチョッパーの動作の最適化、
Q5-Q6 はDTL横方向入射マッチングに使用する。
横方向ステアリング電流:ST1 - ST4 (2組、x and y)
注)ステアリングはDTLへの入射ビームを仮想的なDTの中心軸に揃えて入射させる為に使 用する。入射エラーにより横方向のビーム中心位置の振動が起り、それがエミッタンス増加 をもたらすという予測がある。但し、この横振動はドリフトチューブ内の収束磁石の設置エ ラーによっても生じるので、ある程度の振動は許容せざるを得ない。DTL加速後に補正可能でもある。あまりに大きな入射エラーがあれば、整列をやり直すことが必要だろう。トウィ スパラメータのミスマッチとは区別する。
チョッパー1加速電圧:Ec1
チョッパー1加速位相:fc1
チョッパー2加速電圧:Ec2
チョッパー2加速位相:fc2
3.4 DTLの縦方向の加速パラメータ(タンク番号 1−3)
タンク加速電場: E1, E2, E3
タンク加速位相: f1, f2, f3
タンク周波数デチューニング量:DF1, DF2, DF3
デチューニング量は、各タンクの可変チューナーによる自動周波数追尾システム中におい て、タンク位相検出回路出力のオフセットとして与える事が出来る。チューナー動作回路の位相に対する不感帯の設定量とも関連するので、実際に動作させてみないと、効果がはっき りしない。
注)加速位相は、ビームを高周波位相のどこに入射させるかの設定値である。ある基準高周波(タンク高周波)との相対値で設定する。出力ビームの高周波に対する位相は、ある基準 高周波との相対位相で測定する。全リニアックを通じての統一された位相情報は、変動等が 少ないように設置された基準信号との差から求める。
3.5 DTLの横方向のチューニングパラメータ(磁石番号 1−149)
四極磁石電流(磁場)Q1 - Q149 これらは、横方向の位相進み設定値に従って、全体として(セットとして)変化させる。個々の磁石のチューニングはなるべく回避したい。
3.6 HEBT(DTL3 --> SDTL)の横方向マッチング
四極磁石電流 Q148, Q149, Qs1,Qs2 Q148, Q149はDTLの最後の二つの四極磁石。Qs1,Qs2はDTL3とSDTL1の間のビームラ イン上の四極磁石。
3.7 SDTLの縦方向の加速パラメータ
タンク加速電場: Es1
タンク加速位相: fs1
1本のクライストロンは2台のSDTLタンクを励振するので、可変な加速パラメータはタンク2台につき一組となる。最初のコミッショニング時に、一組の中のそれぞれのタンクの電 場(強度のこと)と位相の分配状況のビームに対する効果をテストしたいと思うが、SDTL タンクが当初の2個だけの場合には、その効果を適切に判断する事は難しいと予想するので、 先延ばし(相当数のSDTLタンクを揃えた後)する可能性もある。将来これらのパラメータ は 16 セットになる予定。
3.8 SDTLの横方向の収束パラメータ(将来の増設時)
四極磁石電流 15セットの電流設定。
3.9 デバンチャーの加速パラメータ(将来の増設時)
タンク加速電場: Ed
タンク加速位相: fd
補足: リニアックのチューニングの良否の判断基準が何種類もある事が指摘できる。基本的には、 デザイン通りの(に近い)ビームパラメータが実現出来ればよいとする。ハロー等の問題が 無視できる大きさならば、この段階では横方向の収束法には自由度が残る。リニアックは円 形加速器の入射器なので、リングで良好な加速が達成出来るチューニングが最善という見方 もある。ここでは、最善の横方向の収束が決まる可能性がある。次に、高エネルギー大強度 ビームのビーム損失に由来する問題がある。リニアック中のビーム損失とリング入射後のビーム損失が共に小さくなるような設定が望ましいという観点もある。そんなわけで、リニ アック単体では、自由にビームハンドリングが出来る事を目標とし、入射器としては、リン グビーム強度を最適化するという事になるだろう。
4 測定項目、使用モニター、及び得られる情報等 基本的なビームパラメータ測定項目を列挙する。
測定項目 モニター 情報
1. ビーム電流(Ib) CT ビーム強度、ビーム透過率、non-destructive
2. バンチ位相 FCT or BPM or SL バンチ位相、バンチ波形、non-destructive
3. ビームエネルギー(W) FCT or BPM or SL 平均エネルギー、non-destructive
4. ビームエネルギー幅(DW) BANL エネルギー幅、destructive
5. ビーム横エミッタンス(ex) EM 横エミッタンス、destructive
6. ビーム中心位置 BPM ビーム中心位置、整列誤差、non-destructive
7. ビームプロファイル WS ビーム横幅、ビーム中心位置、横収束情報、 横エミッタンス、destructive
8. ビーム損失 BLM 場所と時間関数で測定出来るビーム損失
9. ビーム縦エミッタンス(ez) 縦エミッタンス
10.バンチ詳細情報 BSM バンチの縦方向の形 BLVD バンチの縦方向の形、バンチエネルギー
注)異なる2点でのバンチ位相測定から time-of-flight により平均速度を求める。間にある加速タンク電圧はゼロにする。
注)BPMで位相幅測定がむずかしい場合は、ある程度の情報が得られるFCTを使う。
注)モニターの精度は重要な指針であが、ここでは次の指摘をする。モニターはビームを測定するが、同時にその状態を形成する加速パラメータが存在する。一般に加速パラメータは 精度よく知る(設定する)事が出来る。例えば、高周波位相を変えた時に、直近の位相モニ ターのビーム測定には変化がなくても、加速後のビームの性質が観測可能程度変ることはあ りうる。
5 MEBTのチューニング
モニター設置場所を図8.1に示す。
5.1 MEBT電流透過率 CTがMEBTの入り口と出口に設置される。
5.2 RFQ出力ビームの横方向位置 Q1のBPM及びDR-2のWSで測定する。
5.3 MEBTへの横入射マッチング WSをDR-2、DR-5、DR-8に設置する。twiss parametersをBENDの後で測定する。
5.4 横エミタンス測定 DR-8にてBENDの後ろで測定する。ライン上の4個のWSを使ったプロファイル測定から も可能。
5.5 RFQビーム位相情報 Q-1のBPMにて位相と位相幅を測定。
5.6 RFQビーム平均エネルギー Q-1のとQ4のBPMから求める(buncher off)。
5.7 バンチャー1and2のチューニング Q1とQ4のBPMのエネルギー測定により、バンチャー1の位相を設定。 Q4とQ8のBPMのエネルギー測定により、バンチャー2の位相を設定。 DR-8のBEND利用によるエネルギー幅測定よりバンチャー1の電場を設定。又はDR-8の FCTによるバンチ波形を使用。又はBLVDを使用。 Q8のBPMによるバンチ波形により、バンチャー2の電場を設定する。
5.8 DTLへの横方向マッチング Q5 - Q8をチューニングする。モニターはDR-13のWSを使用。
5.9 ステアリング(ST)の調整 必要があれば、DR-8とDR-13のWSをモニターしながら、調整する。DTL各タンク出口の WSも利用する。
5.10 チョッパーのチューニング DR-7のBPM、DR-8のWS、Scraperの出力電流、Q-8のBPMを使ってチューニングする。 5.11 ビームストッパー DR-12にFCを入れる。
補足 当然ながら、加速電場等の設定は第一には高周波モニターによる測定値をデザイン値にあ わせる。
6 DTLのチューニング
モニター設置場所を図2に示す。理想的には、短パルス小電流の場合のチューニングが、長 パルス大電流のビームにおいて、そのまま実現されるように、高周波のコントロールがなさ れる。その達成度は、加速電圧、加速位相、そして加速ビームの位相とエネルギーの、パル ス内の変化を測定すれば判断出来る。
注)リニアックの場合、最初にビームと通す為には、細かな設定はいらない。加速をしなく とも(加速電圧をオフ)、適当な横収束力があれば、RFQ-MEBTビームはDTLタンクを通過 するはずである。加速電場と位相のラフな設定は透過率とエネルギー測定により可能であ る。適当な強さの横収束力にすれば、ビームを保持する為には十分である。この類の測定で は、DTL出口直後にFCをおくのが確実で感度も高い。
6.1 DTL電流 CTがDTL各タンクの入り口と出口に設置され、電流透過率、大きなビーム損失を監視。DTL の最下流にはFCをおいて電流測定とビームダンプに使用。
6.2 加速電場の設定 各タンクの出口に設置するFCTによる位相測定を使ってビームエネルギーを算出する。加 速ビームの位相幅も測定する。各タンクの加速電場の強度と位相をスキャンして、最適な設 定をさがす。信号を揃える為に第3タンクの後ろにもFCTを入れる。EANLによりエネル ギー幅を測定する。
6.3 横方向収束の最適化 横の収束力を変える場合には、入射マッチングを変える必要がある。横の収束力と加速ビー ムとの関係の知識を蓄積する事が必要。その場合、DTL出力ビームの横エミッタンスと縦エ ミッタンスが測定可能であり、更に、ハロー部分まで測定出来る感度を有する事が望まし い。最終的には、(200 or 400 MeV全システム完成後、リングの電流とビーム損失がどうな るかにより最適設定値が決まる。
6.4 ビーム損失 タンクに沿って分布させて設置するロスモニター(BLM)を使う。場所とパルス内のどこ で落ちるかという情報が有用である。ビーム損失がリニアックの中で起こる場合には、なん らかのエラー、例えば、 1)電場エラー 2)入射エラー 3)収束磁石エラー が考えられる。(2)と(3)は整列エラーも含んでいる。逐次テストを進める事になる。な お、このBLMが速ければ、緊急ビームストップに使える。
6.5 ビーム位置の補正 DTLとSDTLの間のビームラインで、ビーム横方向の位置補正が、必要となれば行う。
6.6 HBETの横方向マッチング 4台の収束磁石(3.6 参照)によりマッチングを行う。SDTL加速後のWSで幅を測定し、エ ミッタンスを測定する。
6.7 SDTLのチューニング 今回製作のSDTLは2タンクなので、基本的な測定はDTLと同じ。後続のSDTLが追加され た時に、必要となる測定技術の開発を行う。
7 チューニング全般について
7.1 ビーム電流 ビーム損失のおそれがあるので、最初は小電流(ピーク、平均)で行う。その為には、パル ス幅を小さくする、繰り返し周波数を下げる、イオン源の出力電流を下げる、メッシュをい れて粒子をまびくなど考えられる。従って、RFQ加速前にビームパルス幅を調整出来る事は 必須である。
7.2 基本設定 モニター可能な小ピーク電流により、基本的な加速パラメータの設定ができる。ビームロー ディング補償をしないで設定する。(この部分は習熟すれば省略も可能か)。次に、ビームローディング補償が出来るようにパルス幅を増やして、同時にピーク電流も増やして、ビー ムローディング補償システムのチューニングを行う。基本動作がチューニング出来れば、パ ルス長さを増やし、ピーク電流を増やして、動作を確認する。加速電場と位相、ビームエネ ルギー、ビーム位相等のパルス内変化が目安となる。繰り返しは少なくてよい。最後に、フ ルスペックのビーム強度に近づける。ピーク電流を大きく変える場合には、全系の他の(横 及び縦)収束力を再チューニングする必要がある。このあたりがわけがわからなくなる原因 の一つとなりやすいので注意する。
7.3 チューニング順序
*定常運転にはいれば、ある低電流で上流よりチューニングを始め、下流を順次行う。電流を増やせば、そこでまた全系のチューニングを行う。運転に関する知識の集積が十分になれ ば、電流を変えた時の再チューニングはデータに従って出来る可能性が生まれる。
*建設後の最初のチューニングをどのようにすべきかは、熟考の余地がある。それは、運転時に定常的に設置出来るモニターの数と種類にも依存する。モニターは場所を占有するの で、ある場合にはビームの質を落とす事にもなりかねない。特に、MEBT及びDTLのタンクの間は注意が必要である。従って、建設途中のある時期にしか測定出来ない設定が存在す る。これをどこまで利用するかが問題となる。日程とコストと労力が全然違ってくるから だ。建設後の最初のビーム測定において、RFQのビーム測定とMEBTのチューニングはきちんと行いたい。即ち、将来のDTLの設置場所にモニターをおいて、縦横のビーム測定を行っておきたい。同時に、定常運転時との対応をつける為にMEBTビームライン途中に偏向磁石をおいて、偏向ラインにてビームの詳しい性質をモニターする。定常運転時には偏向ラインのモニターはチューニングの基準となる。全系の安定な運転において、DTLへの入射 ビームを詳しくモニター出来るようにしておく事は(様々な比較的自由なモニター改良の余 地を残して)重要と考える。いずれにせよ、当初から仕様に近いRFQビームが出る事を前 提とする。
*DTLのタンク1本毎の初期コミッションニングが必要かどうか。縦方向のチューニング の為ならば必要はない。DTLタンクの全部を整列させたあとで各タンク電場の設定は出来 る。横方向についてはどうか。ある磁石の極性が反対の事はありうる事だが(ないように チェックするが)、おそらく磁石の特定は出来るし、電流の向きを変える事も容易。磁石と タンク毎の整列精度は、経験上から仕様精度内の実現は可能。入射ビームの偏りによりビー ム中心位置がずれる事はありうるが、それはMEBTのステアリングで補正する。補正しき れない場合には、今後の事を考えると、DTLを基準にしてMEBTとRFQの整列をやりなお す事になる。
7.4 チョッパーのチューニング
*このチューニングは、他のチューニングとはぼ独立に行う事が出来る。ただし、タンクの ビームローディング量が変る事に注意すべきである。ビームローディング補償がパルス内の 平均電流(電荷の総量)に対して行われるようになっており、電流の変化に自動的に対応出 来れば、新たな問題はない。パルス内の平均電流という時に、RF電力供給の立場では、 チョッパー動作により平均電流は変化する事になるが、収束力を含めてビームの運動の側面 から眺めると平均電流は変化しない。そこでいわゆるピーク電流値(例えば30 mA)と、ピーク電流にチョッピング率を掛けた実効値表示的なピーク電流値が必要となる。
*チョッパー電圧と位相の調整はMEBTのQ4のBPM、DR-8のWS、Scraperの電流波形を 見ながら行う。同時にnormal beamをQ-8のBPM、DR-13のWS、DTL加速後のFCT、WS、BPMでモニターする。特にMEBTのQ-4はチョッパー動作(ビームの振れ角)に大きな影響を与える事に注意する。
7.5 マッチングについて 一般に入射のミスマッチングによって、加速途中のビームの振動が起こる。従って、この振 動の振幅が小さくなるようにチューニングをすれば、マッチングが達成されたと考えてよ い。測定項目は、ビーム横幅(WS)、ビーム中心位置(BPM)とビーム位相幅(FCT or BPM)。エネルギー幅(EANL)も使えるが、これは測定場所が限られる。注意すべきは、振動を起こす原因は他にもある事である。即ち相対的なものだから、ビーム自身が違っていても、受ける側の加速パラメータが違っていても同じ効果となる事である。従って、チューニングの 時には、出来る限りマッチングのとれたビームを使うべきであり、加速パラメータのチュー ニングと入射マッチングの調整は交互に順次調整されていくべきものである。
7.6 定常運転時に使用するビームモニター
1) ビーム電流: CT
2) ビーム損失: BLM
3) ビーム位相: FCT or BPM
4) ビーム中心位置: BPM
5) チョッパー動作の確認:MEBT-Q8のBPMとDTL加速後のBPM。DTL加速後は、チョッ パーONのゲート内の粒子量を測定。 (1)-(3)は代表値をモニターし、同時にパルス内変化をCRTで監視。パルス内変化量をコン ピュータで自動監視。
7.7 モニターについて 各タイプのモニターについては、最近発表されたもの、新しく開発途上のもの、アイデアだ けのものなどが多く存在するので、今後の長い開発過程が必要且つ重要と思われる。そうし た事がやりやすいような環境とシステムの構築を願う。 ーーーーーーーーーーーー モニターについて おわり
10月12日(月) メイルを見ると住重より、仕様書案について質問と疑問があるので打ちあわせをしたいとある。そこで、契約と話をして、説明会では質問等は契約を通して書面でお願いしたいと契約から説明があったのでそのようにしてほしいとの返事をした。YYにも話をしておい た。
1時半よりリニアック打ちあわせ。穴見出席せず。モニター五十嵐。山崎より最新の原研との成り行き。東海に作りそうだという話。その場合デューティを10%まで補償する事という話。野口が0.2度と言っていたのに、その4倍でいいのかという追及。じつは順序が逆で、デューティが高くてももつように初めから設定水量を大きくしておいたわけ。内藤君 タンクのQの話。TE(97%)にくらべてTM(88%)が低すぎる件。
10月13日(火) 壁谷へ電話。200までの事。1年余裕があれば大丈夫だとの事。加速管打ちあわせを水3時半に設定。吉野君とアセンブリーに行き、磁石のインダクタンス測定。HPのメーターが少しおかしいが、これは測定領域よりもLが小さい為かも。およそ正しいとすれば、計算とほぼあっている。平松さんよりビームロスモニターのイオンチェンバー型。但しエネルギーが 低すぎてだめかもしれない。中川さんへ電話して彼の資料を聞く。