topへ戻る

リング技術問題の由縁は?

(本稿は著者の推理をまじえて書いております事を、予め御了承願います)

リングの(要素)製作において、由々しき問題が生じたと聞く。これは、筆者が指摘しているのではなく、前節で紹介したように、J - PARC 加速器問題検討会という公の会議が指摘しているのである。

KEKの加速器を知っている方であれば、リング関係でこれだけの問題が何故生じたのかといぶかるのではなかろうか。KEKでは陽子加速器PSの運転と維持向上を通じて、それなりの知識を蓄えていたはずである。そうした事が、何故活かされなかったのか。

うわさに聞いている例を挙げてみよう。
  1. KEKのリング高周波の実務に明るい専門家の中には、何故か開発に参加していない人がいる。
  2. KEK PSにおいても、入出射関連機器は難しい事が知れ渡っていた。そうした経験がどのように活かされたのか。
  3. リーダーの職にある方で、リングに詳しい方が見当たらなかったようである。むしろ、そうした対応の出来る人材を排除していたのではないか。
  4. あるリーダーが設計を兼務していたというような記述がどこかにあったが、それは何かの間違いであろう。
  5. リニアックにおいても、技術的問題が生じる現実的な可能性が何回もあった。リニアックの場合、KEKには技術集団があり、加速器建設リーダーの危うい提案は、ことごとくつぶされた。一例を挙げよう。リニアックの加速管のSDTLを、某外国で作る事をリーダーが独断でほとんど決めて、反対を押し切って高電力試作品まで作った。外国とのコラボレーション好きの由縁であろうか。真相は不明である。大勢が何回も外国出張したにもかかわらず、試作品の出来の悪さは、特筆すべきもので、仲介担当の日本の会社から極秘レポートが出されている。ここに費やした無駄金は**億円程度に達するかもしれない。

    某外国で作った試作の高電力モデルSDTLがどのような出来具合であったのか。1998年6月16日の研究日記には次のようにある。


    1998年6月16日(火) 昼のシフト。8時過ぎ家を出た。10時頃電話がかかって来て、H社が主幹の部屋に来ているという。5人くらいいて、N、Uがいた。まず、測定されたQ値が悪い事。計算が 36000に対して24000。ドリフトチューブの据え付け精度が縦横ともに0.3 mmで極めて悪い事。H社の担当の話によると、連絡しても返事をくれないとか、対応が極めて悪かったとの話。Yは盛んに、私がついていればなどと言っていたが、実際には2度もロシアまで出かけているのである。そして、私と激論の末でこの結果である。どこに見識があるのか。きのう、空洞の中の出来具合をみたが、あまりの汚さにびっくりするほどで、油じみているかんじであった。

    参考資料:1998.6.19 SDTL RF試験:ロシア製のSDTL試作空洞が到着したので、基本的な空洞特性を測定した最初の報告
ここでは、いくつかの伝聞を紹介した。この他にも、直接は聞いていない重要な理由があるそうだ。理由は複合的であろうが、結果責任を負うべき事柄と人物は相当にクリアではあるまいか。