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: 4.3 永久四極磁石による収束法 : 4. 大型ハドロン計画 JHP : 4.1 大型ハドロン計画 デザインレポート 1988   目次   索引

4.2 RFQ エネルギー

RFQ加速器はロシアにおいてその原理が発明され、アメリカのロスアラモスで、その加速器としての性能が実証されたという、当時としては非常に新しい加速器であった。私見では、この加速方式の登場により、大強度高エネルギー陽子リニアックのデザインは新しい局面を迎えたと言っても過言ではないと思われる。
当時の世界各地でのデザインと比べての私のデザインの第一の特徴は、RFQ加速器の出力エネルギーが高い事である。3 MeV という当時としては一番高いエネルギーを選択した私は、会議の席では皆さまからの反論の嵐を受けた。

ほぼ全員:世界のデザインでは一番高くてせいぜい2MeV である。こんな高いエネルギーではRFQ は働かない。加速効率が大幅に落ちるので、よろしくない。長さが長くなりすぎて、製作が難しい。

私の反論は次のごとくである。

  1. 次の加速器のDTLへの入射を考えると、高いエネルギーが望ましい。これは、本リニアックの中の一番難しい所を緩和する方向である。
  2. 一つしかない加速器コンポーネントで、電力効率が少しばかり悪くなっても、なんら問題はない。それは、収束力の不足を意味していないので、RFQ空洞の基本的な問題ではない。
  3. 3MeV というエネルギーから決まる長さが、一台の切削器の上に乗るぎりぎりの大きさである。
  4. 全長を短くするためにも、RFQの入射エネルギーは50 keVとして、更に低いエネルギーを選択していない。

まわりの研究者の中には、舶来品が好きな方が結構存在する。彼らにとっては、外国のデザインを批判するなどという事は夢にも考え及ばぬ事のようであり、外国の例を引きあいに出して議論すれば、それで批判した事になっていると考えているようである。私の見方はこうである。

外国では、個人の仕事評価の問題から、デザインレポートを量産する必要があり、有象無象のレポートが山のように出てくる。中には、何も経験がない方が、机上の空論を連ねたものもある、まともに信じて、同じようなデザインをすれば、とんでもない事になる。彼らの世界では、そうした事がわかっているので、ある時期までは恐るべき革新的なパラメータと構造を使ってデザインしていても、最終的には、それらとまったく違ったデザインでマシーンを作る事が多い。
翻って、日本の模倣患者のデザインはどうかと見れば、外国産の革新的なデザインを使って一旦発表してしまうと、なかなかそれを変更する事が出来ない。それで、本家の方が、あれは誤っていたとして、さっさとデザインを変えたあとでも、いつまでもそうしたデザインを引きずっている場合がある。

さて、現在、RFQの出力エネルギー3 MeV は最先端でもなんでもない。世界中で、更に高いエネルギーを持つRFQが計画され、建設されている。当時は、山崎氏も、国際会議等で質問を受けて返答に困るというような言い方をしていた。最初のDTLのビーム加速モデル空洞では、山崎氏は、次のような提案を強硬に主張した。私は、顔を立てる為に、了解した。当時でも、今考えても、実に馬鹿げた修正である。

山崎提案による修正仕様:
RFQは3MeV まで加速出来るかどうか疑問なので、DTLの入射部は、低エネルギー側にエネルギーを将来延長する事が出来るようなアタッチメントリングを持つように改造する。

この提案により、そうでなくても複雑なDTLの入射端部が複雑になり、設置作業等は著しく難しくなり、そして数百万円以上の費用がかかった。全て無駄であった。


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