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5.1.5 チューニングとビームスタディ結果(2002年)

本節は、KEKにおけるチョップビームテストの後、その注意点を簡単にまとめたものであり、ある委員会への参考資料に提出した。

1) 2002年のビームスタディにより得られた結果について

2002年6月から7月にかけて、長時間のビームスタディを行った結果、RFチョッパーの基本性能、チューニング法についての成果が得られました。それらは、公表しております(参考文献参照)。
その主要な部分は次のようなものです。

1. 過渡特性については、この方式を使う場合の最良の結果が得られており、J-PARCに必要な特性を満たすと結論した。仮に、速い過渡特性が要求される場合には、二つの改良方法を提案している。
2. RFチョッパーの横アクセプタンスには余裕はあまりないが、デザインエミッタンスには充分対応できており、25mA 程度のビームテストにおいて、RFチョッパー部分においてビーム損失は認められない。
3. RFチョッパーの縦アクセプタンスには、充分な余裕があり、5mAビームの場合には、RFチョッパーの半幅で48度の位相範囲において、充分なキック特性が得られた。これは、96 度(48x2)に5mAビームのバンチ位相全幅を足した程度の位相範囲において、ビームは充分キックされている事を意味している。ビーム電流24mA の時にも、RFチョッパーの最適位相において、ビームの蹴り残しは測定限界以下であり、位相を振って余裕度の確認も行っている。このように優れた性能が得られている理由は、空洞励振電力を当初の設定値(充分なキック角度が得られる高周波電力)の2倍にしているからである。

2) 測定方法について

ビームスタディとは、最終的には、ビーム通過時の機器の最適チューニング点を求める事と考える。空洞の場合には、空洞のチューニングを含めて細心の注意のもとに行う必要がある。MEBT全体の設定の中で、RF チョッパーのチューニング時に注意すべき点を挙げる。

1. 空洞のチューニングの確認
○ 連結空洞の場合、それぞれの空洞が最適にチューニングされている事が必須である。
○ ダミーロードを含めて、全体構成が正しく設定されている事。
○ 出力レベルの確認
○ NEC 増幅器の入力レベルと入力パルスの過渡特性の確認
  (入力電力が減衰している事がたまにあったので)
○ NEC 増幅器の出力レベルと出力パルスの過渡特性の確認
○ RFD 空洞モニター出力によるレベルとパルスの過渡特性の確認
空洞のチューニングがずれていると、全体の特性が劣化する。特性劣化が認められる場合には、まずチューナーにより改善を試みる。それだけでは、改善出来ない場合にはネットワーク測定を行って原因を推定する。
○ ロウレベルパルスコントローラーの位相反転効果部分のチューニング

2. RFQ ビームエネルギー及び設定の確認
3. 第一バンチャーの強度と位相の最適化。
バンチャーにより加減速しない事。バンチャーのパラメータ変化に対応して、BPMとFCTにより測定するバンチ波形が適切な変化をする事を確認して、最適位置をさがす。バンチャー位相とRFD位相を振れば、RFD のバケツからはみ出させる事は容易に可能なので、それぞれの最適位置を探す。
4. 励振電力と振れ角のチェックを行い、正常である事を確認する。最終的には36kWの最大電力を使う。これにより、立ち上がり特性が改善され、諸々の余裕度が充分確保される。この場合、蹴られたビームのある部分は、ビームスクレーパではなくて、そこまでのビームパイプの壁に分散しながら衝突する。結果として、定常状態においてはビームスクレーパに衝突するビームは少ない事に注意する。
5. 前項の時に、スクレーパ位置の確認と設定も行う。
6. このような手順を踏んで、参考文献1の図1,2,3の波形(本稿にも添付した)が得られる事を確認する。得られない場合には、チューニングのどこかに誤りがあると考えて、再度点検しつつ繰り返す事が必要。

3)現在のRF チョッパーのチューニング状態

一昨年の暮にMEBT においてターボポンプ損傷(羽根損傷による急停止)事故があった。その時に、MEBT 架台には大きな衝撃が与えられ、チョッパー空洞の近くにおいて修理作業が為された。2003年2月の時点では、チョッパー空洞のチューニングにずれが生じていたようである。最近のRFチョッパー励振波形を見ると、チューニングがずれた結果、二つのチョッパー空洞の間において大きなミスマッチがある状態となっている。このような状態では、良い結果を得る事は難しいと考える。

RFチョッパー空洞のビームスタディの場合には、空洞の特性とシステム全体の性質を充分理解の上、適切なる手順に従ってスタディを行う事が必要でしょう。
                     

参考図:

図 5.5: MEBT最下流のBPMにより測定したチョップビーム。サインの山が324MHzのマイクロバンチに対応する。チョップビーム幅は20nsec程度。10nsec/div。本図のピーク電流は24mA。
\includegraphics[width=10cm]{fig6-100.eps}

図 5.6: 2個の極短チョップビーム。繰り返し周波数は約2MHz。100nsec/div。ピーク電流24mA。
\includegraphics[width=10cm]{chopbeam2.EPS}

図 5.7: チョップビーム幅300nsecのチョップビーム。繰り返し周波数は2MHz。100nsec/div。ピーク電流24mA。
\includegraphics[width=10cm]{twochoppulse3.EPS}

図 5.8: 位相反転スウィッチオフの場合のビームの立ち上がり部分。4nsec/div。
\includegraphics[width=10cm]{choprevOFF.EPS}

図 5.9: 位相反転スウィッチオンの場合のビームの立ち上がり部分。4nsec/div。
\includegraphics[width=10cm]{choprevON.EPS}

参考文献: "The development and beam test of an RF chopper system for J-PARC, " S. Wang, S. Fu, T. Kato, NIM-A Vol.547 (2005) 302-312.


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