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4. 物理学会でのセンター長の報告について 2007年3月

報告、あるいは発表は、大いに成果を報告すきではあるが、科学的な錯覚を期待するような報告をすれば、報告者の意図が正しく伝達されない可能性がある。J-PARCは、大きな予算を使う大プロジェクトであるから、色々なレベルで報告をしなければならない。特に、ビームも出た事であるから、それをしかるべく報告する事は当然の事である。年に二回開催される日本物理学会の高エネルギー物理研究者の集まりで、J-PARCセンター長の報告「J-PARC 進捗状況」が2007年3月暮にあった。事前に配信された報告要旨を第4章の参考資料として載せた。J-PARCリニアックでビームを加速した事は、最近の大いなる成果であろう。発表中の重要な図と推定されるものを以下に示す。

図 4.1: 日本物理学会で行われた講演「J-PARC 進捗状況」で示された成果
\includegraphics[width=10cm]{HECreportLinacW.EPS}

この図を発表した意図は、図の中の注釈「SDTL15後のエネルギー測定値は181.3MeV」に象徴されているだろう。この注釈は、リニアックがデザインに沿って動いている事を成果として強調する目的で書かれているのであろうか。
同じ物理的内容を別の表示方法で示すと以下の図になる。

図 4.2: SDTLエネルギー測定値のデザイン値との差の割り合い
\includegraphics[width=10cm]{PLOT.SDTLenergydifratio.EPS}

私見によれば、この段階のリニアックのチューニング状態を科学技術的に適正に評価できる図は、後者と考えられる。J-PARCリニアックは、ただ単に最終出力エネルギーの平均値が、そこそこであれば良いという性能を目的にしているわけではない。あるエネルギーの塊が大きな標的にドカンと当れば良いというものではないのである。本データを測定した2月のチューニングにおいて、途中の加速空洞が放電によりダウンするような設定をしながら、とにかく最終エネルギーをデザイン値に近づける努力をした事が、報告されている(第2章 6-1節 第3週のSDTLエネルギー測定データ等)。担当者には、色々な理由があるだろうが、図4.1の表示形式は、最終エネルギーだけを問題にする考えから描かれている。従って、そのようなレベルの聴衆を想定していると推定される。
後者の図は、リニアックのチューニングが、ビームの性質に影響を及ぼすと考えるだけの科学的予備知識を持ち、リニアックビームの性質(それはJ-PARC加速器全体のビーム強度に直接反映する)に関心がある聴衆にとっても、見ごたえがあるものであろう。最初の図を見たユーザーは、これでリニアックは完了だと考え、第4.2図を見たユーザーは、これからのチューニングが本番だと思うだろう。
物理学会の聴衆は、前者のレベルであると、担当者は想定したのであろう。


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