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: 2.1.2 加速電場ー2 : 2.1 ビームスタディ結果:2007年前半のスタディからの改善 : 2.1 ビームスタディ結果:2007年前半のスタディからの改善   目次   索引

2.1.1 加速電場ー1

加速電場の強度と位相の設定は、リニアックの第一の課題である。2007年前半のスタディは、高周波電場のモニターの測定値に相当の曖昧さを残したまま、行われた。そのあたりは相当に改善されたと期待できる。しかし、一つ注意しなければいけない事がある。既に設置されている高周波機器によって測定精度が決まってしまう事があるという点である。最終端の受け口の測定器にどんなに高価な素晴らしい機器を用意しても、高周波回路の途中に並の精度で作られている機器があれば、測定精度はそこで制限されてしまうのである。これは、高周波系全体をデザインする時のレベル(資金とデザイン方針)で決まっているのである。

$\bullet$ 10月10日配信: Subject: KLY出力レベル(RUN9まとめ)

空洞,RF-Gr のみなさま

クライストロン出力レベルについて、最終的な評価結果を送ります。

全ヶ所の校正値(オフセット値)を再測定しました。
KLY出力に関しては以前より信頼性が高くなった思います。
(ただし導波管方結は60dBだとする)

この結果では設計値に対してS14,15が特に低く見えます。
今のところ考えられる理由がありません。
S7あたりも低めです。

DTLに関しては、元になってるデータ(設計値、カップリング等)が明確でないので、私からは評価を控えます。

図 2.1: クライストロン出力  RUN9の位相スキャン結果
\includegraphics[width=13cm]{KLYout-PhaseScan200710.EPS}

ここに引用したメイルは高周波担当者からの配信である。
参考用として、run-6時点(4月17日配信データ)を並べて示そう。

図 2.2: SDTLタンクレベルのチェック:4月時点の結果
\includegraphics[width=13cm]{KLYout-PhaseScantemp.EPS}

配信されたグラフのSDTL部分の結果(2.1図)をみると、計算電力と励振電力のおよその傾向はあっており、2007年春先の結果(2.2図、あるいは、加速電場について)と比べると、いくらかの改善が為されたといえる。ひとつ注目するのは、設定された空洞励振電力の値が、ほとんどの場合に、計算励振電力よりも小さくなっている点である。理由は四つ考えられる。
第一は、高周波電力系の測定に系統的なエラーを含む場合である。この場合には、計算と実際の値の差が、片方にずれていてもおかしくはない。かつてある物を発注して、その精度を+ー同じ程度に設定したが、出来た物を見ると、全数の誤差平均値はゼロではなく、ある偏りがあった。製作する側の都合の良い方向へのオフセットが生じるのである。
第二は、空洞の電磁場特性の測定に伴うエラーである。これも偏りを生じる可能性がある。
第三は、リニアック中のどこかにおいて、初期デザインと違うビームあるいは運転パラメータが設定されている場合である。これは、リニアックの各加速ステージに於けるビームエネルギーと高周波に対する位相が正確に測定できれば、推定できよう。
第四は、実際の空洞の形状とそれに基づく計算結果の間に何らかの差が生じる場合である。これには2種類あって、第一は必要電力計算過程で生じるエラー、第二は、空洞の加速パラメータ計算過程で生じるエラーである。J-PARCのDTLとSDTLは、これらのデザイン作業が行われた時(1995年頃)に、世の中に普通に出回っていた計算方法を使って得られる加速効率に比べて、1〜2パーセント弱加速効率がよくなるように工夫されてデザインされている。基本形状はほぼ同じであるが、ある種の補正効果を取り込んでいるのである。これは短いリニアック長さで少しでも加速効率をあげる為の僅かな努力の結果といえよう。従って、かつて流通していた通常の計算方法によって加速パラメータを算出すると、実際に作られている空洞に比べて加速効率が落ちる事になる。仮に、計算電力と励振電力の間の差が有意であるとすれば、上に述べたような理由等が考えられるだろう。

高周波グループ・空洞グループで行われたメインテナンスを記す配信メイルを紹介しておこう。

$\bullet$ 10月18日配信:Subject: [jk-linac:01939] 第87回 J-PARC Linac RF 打合せメモ ('07.10.18)

第 87 回 J-PARC Linac RF 打合せメモ

日 時:2007.10.18 (木) 10:30 〜 11:55
場 所:リニアック棟クライストロン準備室
ーーー略ーーー
・クライストロン出力電力 
 - S12 の方結を新品と交換した.パワーの表示は 1.04 MW から 1.26 MW になり,計算値との一致はよくなった.
 - 全てのクライストロン出力のオフセット値 (RF ケーブル,減衰器,4 分配器,LPF の和) を再測定した.ただし,方結の結合度は 60.0 dB とする.以前より信頼性が良くなったと考えられる.S14, S15, S7 がやや低めである.今後,全てのオフセット値の再測定を行なう.
ーーー略ー ・203D 同軸管の調査&  - 昨日までに,S11Bまで終了.今週中に SDTL は終わらせる予定.残りは次回の保守期間中に作業を行なう.
 - S7B の空洞カプラーとカプラー直前の同軸管の間で放電痕が発見された.アンカーコネクターは新品と交換したが,内導体の変色部は研磨して再使用することにし,次回の改修時に新品と交換する.
 - 相乗りで,空洞 -G が空洞特性 (Q 値,カプラー〜各ピックアップ間の透過係数) の測定を行なっている.


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