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: 5.3 期待される性能を満たしていないイオン源問題とその背景 : 5. 再び前段部分の問題点について : 5.1 放電多発により定格運転が危惧される問題   目次   索引

5.2 RFQ出力エネルギー不足の問題とプリチョッパー電源

  1. RFQ出力エネルギーが定格に比べて、40keV程度低い。
  2. プリチョッパー電源の不具合が解決出来ていない。
RFQ出力エネルギーが低い事が事実とすれば、それは総合的な技術力不足の反映である。それは、いまだにプリチョッパー電源の不具合が、巨額の経費にもかかわらず2001年以来、ほとんど何の進歩も示されていない事と同根である。何故、技術力の問題と言えるのか。理由は次のごとくである。

RFQの電極は精密な加工を必要とする。その為に、電極をどのような加工方法で製作するかは、極めて重要な選択であり、そこに技術力が反映される。ここでは、広い意味を持たせて技術力という言葉を使っている。J-PARCリニアックのRFQは2次元加工法を使って切削されている。イメージ的に言えば、馬の鞍型をした回転ドリルにより、加速成分を生み出す為の長軸方向のうねりを削るのである。2次元加工法があるという事は、3次元加工法もある事を意味する。名前から連想されるように、3次元加工は、理論計算通りの電極の形を生み出す事が出来る。2次元加工法は、一つの簡略過程を経ているので、近似的に理論計算の形を切削する。問題は、その近似の程度がある部分では非常に大きい事であり、加速成分の補正を数十パーセントもしなければならない。従って、その補正量をきちんと計算して、それを切削に反映しなければ、得られる加速電場は期待通りにはならない。簡単に考えれば、数十パーセントにも達する補正が必要な切削方法を、このような精密加工において使って良いのかという点が、第一の疑問である。
次の問題は、補正量の見積もりに対する対処法である。聞くところによれば、この補正に関しては、外国の提案者が計算したテーブルをそのまま使った云う。ある時期、その補正計算が間違っていたという話も聞いた記憶がある。この問題に対して、適切に対処していれば、現在の問題は生じないのではないか。これらの問題は、製作前に相当の議論をしたが、結果的には無駄になったという事であろうか。

参考資料:1999年9月第1回統合計画検討会 Slides No.23・28

さて、当面のビームスタディでは、バンチャーの位相をずらして加速する事により、エネルギー不足を補っているが、この方法は、将来の大電流ビームの場合には、縦エミッタンスに影響を与えるかどうか、よく検討する必要があるだろう。かつて、3度の位相シフトが持つ非線形性からの逸脱の程度という議論に対して、対処した事はあるが、20度近いバンチャーの加速位相シフトが何の害悪も惹起しないとは、簡単には言い切れない。
簡単な計算をすれば、バンチャーによるエネルギー補正が引き起こす縦エミッタンス増加の割り合いは、控えめに見積もって次の如くである。

図 5.2: バンチャーで40keV加速する場合に予想される縦エミッタンス定義別のエミッタンス増加率。
\includegraphics[width=10cm]{PLOT.EMgrowBUn1.EPS}

バンチャーは、ビーム(マイクロバンチの意味)中心が、加速電場強度がゼロとなる高周波位相に到達するような設定で、普通は運転される。この場合、加速電場は、通常のビームの広がりの範囲では、殆どリニアとみなせる。バンチャーで加速する場合には、本来の位相をずらして(この場合は20度程度)、ビームをバンチャーへ入射させる。ずらす事により、正弦波の山の部分にビームの端が近づく結果となる。従って、こうした設定により、ビームの縦方向の性質の劣化があるとすれば、これは、正弦波的な加速電場の持つ非線形効果によるものであり、当然ながら、縦エミッタンスの外側部分への効果が大きい。J-PARCリニアックは高エネルギー大強度ビームが特徴であり、高エネルギー部分のビーム損失による放射化問題がビームリミットを決めると予想される。イオン源の増強により、そのような運転が実現する場合には、バンチャー加速による縦方向のビームの性質の劣化という問題は大きな意味を持つであろう。

RFQ 出力エネルギー(3MeV)に対してのエネルギーのエラーの割り合いは、-1.33パーセントである。電場分布があまりよくなくて(第LAST-3章 第2.1.2 節 20 MeVリニアックの測定と検討を参照)、出力エネルギーの低下が測定されたKEK PS 20 MeVリニアックの出力エネルギーの低下の割り合いは、およそ-0.96パーセントである。大雑把に云えば、この割り合い程度にJ-PARC RFQの加速電場の分布は乱れているという事であろう。

プリチョッパーの電源問題は、2001年と同じ状態で放置されているように見える。重要な問題に対して、6年にわたり、進展が見られないというのは、どうした理由であろう。費用対効果という考え方からすれば、相当額の効果がゼロという結果になっているのではないか。問題は幾つか指摘出来る。

当初日程からすれば、既にRCSにビームが供給されており、前段部門が抱えるこれらの問題は、既に緊急且つ重要な問題として、ほとんど全てのJ-PARC関係者に認識されているであろう。不幸中の不幸は、幾つかの問題によりRCS完工が遅れている結果、ここに述べた前段の問題が未だに周知されておらず、真剣に議論されていない事であろう。こうした状態が続く場合には、実質的なビームの供給は更に遅れる事になる。


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