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図3.3は、MEBTのミスマッチが存在する時のリニアック全系のビーム電流透過率と、修正後の値を表している。電流測定値に伴う測定誤差の方が、ミスマッチ修正による変化よりも大きい事がわかる。但し、個々のモニターに関しては、ミスマッチ修正後の値が大きくなっているから、モニターの絶対精度に問題があるという事を示している。この図から見る限り、MEBTでミスマッチがあり、SDTLの全系にわたり高周波が不安定になるという反応を起していても、ビーム電流の測定値を眺めるだけでは、状況はなかなか把握出来ないと思われる。
図3.4は、J-PARCリニアックのビーム孔半径と想定されていたrmsビームサイズを表している。ビーム半径をrmsサイズの5倍としても、まだ充分な余裕がある事がわかる。これは、エラーを含むビームシミュレーションで生み出されるビームのハロー部分がリニアックのビーム孔にあたらないようなデザインとしたので、かなりの余裕があるデザインとなった。現在の測定で、SDTL出口で4mm程度のビームセンターの振れがあるが、プロファイルが相当に広がっていない限り、大きなビーム損失は起らないと思われる。
DTLの安定化に伴う注意事項としても述べたが( 20 MeVリニアックの測定と検討 1980年〜)、充分な余裕があるデザインでは、運転時にはそれなりの注意が必要となる。
その意味では、今回の場合に、微小なビーム損失が測定可能なビームロスモニターは、どのような記録を残しているのか、興味深い。